アタシんちの家族

昔このジィは、いわゆる「教官」もどきの職についていたせいか、それはそれは女性によくモテた。そして不倫騒動をきっかけに、ある日突然、なななんと家族を捨てて家を出て行ってしまうのである。まだ子供だった私は父親が家族を捨てたことに酷く傷つき悲しんだが、そんな父不在の環境にもやっと慣れてきた頃、今度は母親が義理父候補なるインテリ君を連れて来たのだ。が、このインテリ君、私と全く反りが合わず、反抗期の私をボッコボコに殴り蹴り倒すという事件を起こす。それをきっかけに一家離散。以来、お互い干渉することも無く、それぞれ好き勝手に生きてきた。良く言えば自由なのだが、ちょっと変わった家族である。

あれから数十年、相変わらず勝手気ままな一人暮らしを続けていた。ただ自分も親も歳だけは確実にとっているし衰えもきている。いつかは面倒見なきゃだな・・・と思うようになっていたそんな矢先、その日は突然やってきた。

昔から問題大有りの糞ジジィだけに、再び一緒に暮らす状況に戸惑いもある。が、それでも親は親。なんとかなるのだろう、きっと。

悪戦苦闘

そんなこんなで、認知機能に全く問題ない(?)ジィを引き取るも悪戦苦闘の日々は続く。

例えば、散歩の帰りが遅い時は道に迷っているのでスマホのGPSを頼りに車で探しに行くのだ。やっとの思いで見つけ出して自宅に連れ帰る。車からジィを降ろして安堵したのも束の間、迷うことなく隣家へと歩き出すジィ。そして燐家の玄関先でドアを開けろと騒ぎ出す。そんな有様なのだ。

家事についてもとんちんかんで、洗濯用洗剤の代わりに漂白剤を洗濯機に入れてしまう。むろん洗濯物すべてシボリ染めか?と見紛う惨状。

こんなんで何年もつだろう?と不安になることしばしばなのである。

親の介護問題、なんとなく覚悟はしていたつもりではあったけど、いざその時になると介護に対する知識もなく何の準備も出来ていないことに愕然とし、己の不甲斐なさに情けなくなる。

焦らず、少しずつ。